○心理学の棚
・記憶とは
記憶
記憶(memory)。
記銘(符号化)→保持(貯蔵)→想起(検索)→忘却の順がある。
記銘(符号化, encoding):情報を憶え込むこと。情報を記憶に取り込める形式に変える。
保持(貯蔵, storage):情報を保存しておくこと。
想起(検索, retrieval):情報を思い出すこと。方法には、再生・再認・再構成がある。
忘却:記憶されていたことを想起できなくなること。
再生(recall):以前の経験を再現する。
再認(recognition):以前の経験と同じ経験であることを確認する。
再構成(reconstruction):以前の経験の要素を組み合わせ再現する。
感覚記憶
感覚記憶(sensory memory)。
知覚の成立以前に、感覚器官を通じて到来した情報をごく一時的に保持する。
保持された情報は急速に崩壊したり、また新たな情報により取り除かれたり(マスク)する。
これは、情報が長く保持されると、重複して処理ができなくなるからである。
短期記憶
短期記憶(STM, Short Term Memory)。
いま見聞きした情報を、ほんの少しの間覚えておく記憶。
努力なしに直前の情報を検索できる、心理的現在である一次記憶。
約20秒間保持される。
情報は、短期記憶貯蔵(STS, Short Term Storage)に蓄える。
時間の経過とともに忘却される。
忘却を防ぐには、リハーサルを行う必要がある。
リハーサル
リハーサル(rehearsal)。
維持リハーサル、精緻化リハーサル、視覚的リハーサルがある。
維持リハーサル
維持リハーサル(maintenance rehearsal)。
情報を、短期記憶内に維持するために行うリハーサル。
薄れていく情報を新鮮にし、再入力させる。
精緻化リハーサル
精緻化リハーサル(elaborative rehearsal)。
情報を、短期記憶から長期記憶に転送して、長期記憶の構造に統合するために意味的処理を行うリハーサル。
視覚的リハーサル
視覚的リハーサル(visual and spatial rehearsal)。
記憶するべき項目を視覚的に思い浮かべるリハーサル。
ワーキングメモリ
作動記憶、作業記憶、ワーキングメモリ(Working Memory)。
情報を一時的に保持しながら、課題の遂行に向けて情報を操作するシステム。
Millerによると、マジックナンバー7±2の情報量(チャンク,chunk)を保持する。
記憶容量(メモリスパン, memory span)には個人差があり、課題のパフォーマンスに影響を与える。
パフォーマンスは、訓練によって改善できる。
Baddeleyのモデルでは、中央制御系・音韻ループ・視空間スケッチパッド・エピソードバッファから成る。
中央制御系
中央制御系(central executive)。
音韻ループ、視空間スケッチパッド、エピソードバッファを制御し、長期記憶と情報をやり取りする。
音韻ループ
音韻ループ(phonological loop)。
言語の理解や推論のため、音韻情報を保持して、維持リハーサルにより忘却を防ぐ。
視空間スケッチパッド
視空間スケッチパッド(visual and spatial sketchpad)。
色・形・質感などの視覚的イメージ、位置などの空間的なイメージを扱う。
エピソードバッファ
エピソードバッファ(episodic buffer)。
音声・視覚・空間情報を統合した表現を保持し、さらにそれら以外の情報も統合する。
長期記憶
長期記憶(LTM, Long Term Memory)。
過去の出来事を思い出そうとして思い出せる記憶。
努力と検索を要する、意識から消失している記憶。
忘却しない限り、一生保持される。
長期記憶の忘却の原因には、減衰説と干渉説がある。
長期記憶の忘却は、Ebbinghausの忘却曲線によって表される。
長期記憶は、顕在記憶と潜在記憶に分けられる。
忘却曲線
忘却曲線(forgetting curve)。
長期記憶の忘却を表す曲線。
記銘してから1日の間に急激な忘却が起こるが、その後の忘却は緩やかに起こる。
減衰説
減衰説(decay theory)。
時間が経つことにより忘却する。
干渉説
干渉説(interference theory)。
新しく項目が呈示されることにより忘却する。
顕在記憶
顕在記憶(explicit memory)、宣言的記憶(declarative memory)、陳述記憶。
言葉で表現できる記憶であり、意識的に記憶される。
事実と経験を保持し、心の眼(mind's eye)で再体験できる。
積極的に思い出す(active recall)、頻繁にアクセスすることにより、長く保持される。
エピソード記憶と意味記憶に分けられる。
エピソード記憶
エピソード記憶(episodic memory)。
個人的体験や出来事など、イベント事象についての記憶。
時間や場所、その時の感情が含まれる。
一度の経験を記憶する、一回りの学習機構である。
強い感情と結びついた出来事の記憶は、フラッシュバルブ記憶(flashbulb memory)と呼ばれる。
自伝的記憶は、エピソード記憶の一種である。
自伝的記憶
自伝的記憶(autobiographical memory)。
自分自身に関する事柄についての記憶。
意味記憶
意味記憶(semantic memory)。
言葉の意味や世界のあり方についての記憶。
CollinsとQuillianの、意味ネットワークというモデルがある。
意味ネットワーク
意味ネットワーク(semantic network)。
意味記憶の構造を表す為のモデル。
概念のノード(円)と関係のリンク(矢印)で表される。
潜在記憶
潜在記憶(implicit memory)、非宣言的記憶(non-declarative memory)、非陳述記憶。
言葉で表現できない記憶であり、意識しなくとも記憶される。
技能を扱う。
繰り返し同じ事物を記憶する。
手続き記憶とプライミング記憶に分けられる。
手続き記憶
手続き記憶(procedual memory)。
物事を行うときの手続についての記憶であり、体で覚える。
技能や手続き、ノウハウ(手続き的知識)を保持する。
技能記憶、連合記憶とも呼ばれる。
簡単に言葉に出来ないことが多く、意識しなくとも使うことができる。
時間をかけて学習した刺激応答などのパターンを反映することができる。
プライミング
プライミング(priming)。
先行する刺激(プライム、prime)が、後続する刺激に影響を与える。
効果は無意識的であり、長期間(1年など)にわたり持続する。
記憶に障害を受けた者にも、効果は損なわれない。
展望的記憶
展望的記憶(prospective memory)。
将来行う行動についての記憶。
回想的記憶
回想的記憶(retrospective memory)。
過去の出来事についての記憶。
参考:田島 信元(1989)『心理学キーワード』有斐閣(有斐閣双書KEYWORD SERIES)
「Wikipedia」<http://ja.wikipedia.org/wiki/>(2007/8/2アクセス)
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