○心理学の棚
・動機とは
動機
動機(motive)。
動因(drive)と区別される時、動因が生理的・機械的要求に基づくものを表し、
動機が目的的・派生的欲求に基づくものを表すことが多い。
ホメオスタシス
ホメオスタシス(homeostasis)。
生体の恒常性を維持する機能。
外的条件が変化しても、身体内部の生理的状態を
生存にとって出来るだけ最適の状態に維持しようとする生理的機制。
渇動因
渇動因(thirst drive)。
身体内の水分が欠乏(細胞組織の脱水)すると水分を摂取しようとする。
口や喉の乾きが身体内の水分の欠乏と対応する時、摂水行動が解発される。
飢餓動因
飢餓動因(hunger drive)。
絶食によって生じる、飢えの動因。
生理的基礎としては、胃の収縮、血液中の糖分、ホルモン、食物のカロリーなどが考えられる。
特殊飢餓
特殊飢餓(specific hunger)。
生理的要求に応じて、欠乏した栄養素を求める状態。
内発的動機
内発的動機(intrinsic motive)。
効力感
効力感(efficacy)。
努力すれば環境に良い変化をもたらすことができると信じ、
意欲的に行動している状態。
有能感
有能感(sense of competence)。
自分の能力についての正しいメタ認知(meta-cognition)を持ち、
その能力で環境に有効に働きかけているという感覚。
スキーマ
スキーマ(schema)。
熟達者の的確な判断を支える知識の構造。
人々の行動を見る枠組み。
これによって、自他の活動を認知し、意味づけし、記憶し、評価する。
自己決定感
自己決定感(feeling of self-determination)。
自分の行動が、他者ではなく自分自身の決定によるものであると認知すること。
無力感
無力感(helplessness)。
努力しても不都合を解消できず、環境に良い変化をもたらすことができないという経験を重ね、
自信、意欲を失っている状態。
こうなると、能動的に行動すれば事態を改善できる状況でさえ、努力を試みようとしなくなる。
これから立ち直るには、援助を与えて能動的な行動の意味を分からせる「強制」が必要になる。
また、能動的な行動の意味を体験して免疫があれば、これに陥ることは少なくなる。
活動動因
活動動因。
活動すること自体を目的とする動因。
好奇動因
好奇動因(curiosity drive)。
新しい事態に当面すると好奇反応や探索反応を示す。
環境の変化を求める。
操作動因
操作動因(manipulation drive)。
事物の操作自体を目的とする動因。
環境に変化を与える。
接触動因
接触動因(contact-comfort drive)。
快い接触による喜びや慰めを感じる。
性動因
性動因(sex drive)。
種の保存には必須ではあっても生命の維持とは無関係であり、他の生理的要因とは同列に考えられない。
下等な動物では、性ホルモンや神経的要因が重要である。
高等な動物になるほど、習慣や性体験などの学習性要因と環境的要因が重要になってくる。
これは異性からの特有な刺激によって引き起こされる。
下等動物では、特定の刺激のみに限定される。
高等動物になるほど、性動因を解発する刺激は複雑となり、刺激に対する反応の仕方にも経験の効果が入ってくる。
母性的動因
母性的動因(maternal drive)。
脳下垂体前葉から分泌されるホルモンによって生じる授乳の衝動に基礎を持つと考えられる。
しかし高等動物になるほど学習もしくは経験に負うところが多くなる。
獲得性動機
獲得性動機(acquired motive)、学習性動機(learned motive)。
高等動物においては、経験を通じて、生得的動因から派生する様々な動因が形成される。
動物が生理的要求を充足させる際に、
その充足や低減ともともと無関係であった刺激が動因としての機能を獲得する。
生命の維持や種の保存に必須のものではないが、
高等動物になるほど、行動の多くがこの動因によって大きく規定されている。
接近動機と回避動機に大別される。
社会的動機
社会的動機(social motive)。
社会生活を通じて獲得される動機。
達成動機
達成動機(achievement motive)。
困難な課題を成功させる、物事を支配する、高い目標を達する、
競争に打ち勝つ、自己を超克する、才能を活かし自尊心を増す、などを求める。
親和動機
親和動機(affiliation motive)。
自分と似た人、自分を好ましく思ってくれる人に近づき、
協力する、愛情を交換する、喜ばせる、忠誠である、ことにより
愛情を得ることを求める。
機能的自律性
機能的自律性(functional autonomy)。
初めは別の目的で行われていたものが、それ自体を目的として行われるようになること。
固執や習慣により、本質的な動機として機能するようになる。
成長志向性理論
成長志向性理論(growth oriented theory)。
Maslowによる理論。
下位の欲求が充足されることにより、より上位の階層へ移行する。
生理的欲求から自尊心の欲求までの4階層に動機づけられた欲求を、欠乏欲求とする。
欠乏欲求は他者によって実現されるものである。
自己実現の欲求に動機づけられた欲求を、成長欲求とする。
生理的欲求
生理的欲求(physiological needs)。
生命機能を維持しようとする欲求。
乳児期に中心的に機能する。
安全の欲求
安全の欲求(safety needs)。
安全性や依存、恐怖からの解放など、個体の保護を求める。
幼児期に中心的に機能する。
所属と愛情の欲求
所属と愛情の欲求(belongingness and love needs)。
社会や仲間から受け容れられたいという欲求。
他人と関わりたい、他者と同じようにしたいという集団帰属の欲求。
児童期に中心的に機能する。
自尊心の欲求
自尊心の欲求(self-esteem needs)。
自分が集団から価値ある存在と認められ、尊敬されたいという自尊心の欲求。
青年期に中心的に機能する。
自己実現の欲求
自己実現の欲求(self-actualization needs)。
自分の能力を発揮し、創造的活動を行い、自己の成長を図りたいという欲求。
個人が潜在する可能性を最大限に発揮すること、あるがままの真実の自己に向かうことを、自己実現とする。
参考:田島 信元(1989)『心理学キーワード』有斐閣(有斐閣双書KEYWORD SERIES)
吉田 正昭,祐宗省三(1976)『心理学3動機づけ・情緒』有斐閣(有斐閣双書)
波多野 誼余夫,稲垣 佳世子(1981)『無気力の心理学』中央公論社(中公新書599)
金城 辰夫(監修),藤岡 新治,山上 精次(共編)『図説現代心理学入門』培風館
「Wikipedia」<http://ja.wikipedia.org/wiki/>(2007/8/3アクセス)
「MINIMUM PSYCHOLOGY」動機づけ第3段階
<http://www.okayama-u.ac.jp/user/hasep/education/2000/_0seminar/motivation3.html>(2007/8/3アクセス)
「武蔵野大学通信教育「教育心理学」学習サイト 」第4章情緒の発達
<http://www5c.biglobe.ne.jp/~kaytee/class/musashino-tsushin2003/edupsy2003/s-site/>(2007/8/3アクセス)
「東京学芸大学教育心理学講座松尾研究室」ゼミ紹介,平成10年度卒論準備ゼミ,2動機づけ理論の概説
<http://www.u-gakugei.ac.jp/~nmatsuo/semi2.htm>(2007/8/3アクセス)
「仔猫の遊び場」心理学,動機−認知的な動機付け
<http://www.oak.dti.ne.jp/~xkana/psycho/intro/intro_35/index.html>(2007/8/3アクセス)
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