○心理学の棚

・内発的動機づけとは

内発的動機づけと、外発的動機づけは、対のものである。

内発的動機づけとは、
賞や罰といった報酬によらない、その行動自体が目的とされる動機づけである。
行動によって喜びや満足感を得ることができる。
行動自体が目的であり、やる気の源泉が内部にあるため、自律的である。

外発的動機付けとは、
賞や罰といった報酬を、行動の目的とする動機づけである。
アメとムチの動機づけと言える。
行動は手段であり、やる気の源泉が外部にあるため、他律的・依存的である。

外発的動機付けの方が、成果は得易いが、効力は短い。
内発的動機づけの方が、成果は得難いが、効力は長い。

内発的動機は、知的好奇心によるところが大きいといわれる。
内発的動機を支えるものとして、効力感が挙げられる。

効力感とは、
自分が行動することによって環境に良い変化をもたらすことができるという感覚である。
「やればできる」という感覚のことであり、以下の3つを含むものである。

・有能感…自己の能力を正しく認識し、それを活かす方法を実践しているという感覚「自分はできる」
・自己決定感…自分の行動は自分が考えて決定しているという感覚「自分がやる」
・他者受容感…自分の能力、それを活かした行動が、他者に受容されるという感覚「自分は受け容れられる」

つまり、
行動の源泉は自分であり、その行動を成功に導けるという自信があり、その行動が認められる、
という感覚が効力感であり、内発的動機を支えている。

効力感があれば、結果期待と効力期待が高まることになる。

・結果期待…行動の結果についての予測
・効力期待…その結果を得る為に自分が行動する能力を有するという予測

これらのことから、次のような過程が見えてくる。

有能感+自己決定感+他者受容感⇒効力感⇒結果期待+効力期待⇒内発的動機⇒行動

そして、その行動が成功し、結果が期待に添えば、効力感が高まる。つまり、自信を増す。
しかし、その行動が失敗し、結果が期待を裏切れば、効力感は低まる。つまり、自信を無くす。

自身の行動によって環境に良い変化をもたらすという結果を得ることができない。
こういった経験により、効力感を失くし、そして、生まれるのが、無力感である。

無力感とは、
努力しても不都合を改善できず、環境に良い変化をもたらすことができないという経験を重ね、
自信・意欲を失っているという感覚のことである。

無力感に陥ると、
自分は望む結果を得られない、と有能感を失くし、
自分は変化を生めないのだから行動は自身によらない、と自己決定感を失くし、
自分は環境に影響しないのだから他者に受け容れられない、と他者受容感をなくし、
結果期待は失敗の結果を期待することとなり、
効力期待は不能であるという効力を期待することとなる。
よって、内発的動機を得ることができず、能動的な行動を起こそうとしなくなる。

無力感を得ると、
実際は能動的に行動すれば成功する場合でも、行動を起こそうとしない。
諦め的態度を学習する。そして、情緒的に混乱する。うつ状態となることもある。

無力感は、予防、治療、ともに可能である。

無力感を予防するには、
無力感を得る前に効力感を得る体験をしておくことが必要である。
そうすれば、期待値の低い行動にも見通しを立てることができる。

無力感から脱するには、強制が必要である。
他者が援助することによって、効力感を学習させる必要がある。

大きな目標を小さな目標に分ける。
こうすることによって状況を整理する。

帰属を明らかにすることで、
失敗の原因や期待値の低さといった決め付けを正す。

そして、小さな成功を積み重ねていくことにより、
再び効力感を得る。

これらの作業を、
無力感に陥っていない他者が援助するのである。
そうして、内発的動機を得られるように向けていく。

帰属の考え方には、原因帰属理論が役立つ。

成功や失敗といった原因の帰属には、
統制の位置と安定性、2つの次元がある。

統制の位置という次元では、原因は内的か外的かに分けられる。
安定性という次元では、原因は安定的か不安定かに分けられる。

原因が内的で安定的である場合、原因は能力に帰属される。
原因が内的で不安定である場合、原因は努力に帰属される。
原因が外的で安定的である場合、原因は課題の困難さに帰属される。
原因が外的で不安定である場合、原因はに帰属される。

原因を能力に帰属する場合、
才能不足なら仕方ない、と諦める可能性が高くなりやすい。

原因を努力に帰属する場合、
頑張れば何とかなるかもしれない、と挑戦し続ける可能性が高くなりやすい。
つまり、内発的動機付けが高まりやすい。

正しい帰属により、行動の成功率は上がるだろう。





トップへ戻る