僕は春の公園に座っていた。 誰も居ない公園の暖かなベンチに腰掛けていた。 僕は知っている。 春の風を甘く見ちゃいけないと。 ふっと花びらが僕の横をよぎった。 僕ははっとした。 その瞬間、僕もふっと飛んでいた。 すっと空へ舞い上がって、舞い上がって、 ずっとずっと上がっていって、、、 急に冷たい風が吹いた。 僕はベンチに腰掛けていた。 ほらね、やっぱり風を甘く見ちゃいけない。 それはまだ微かに冬の余韻を残した、 そう、どこかにまだ粉雪の匂いのする、風だった。 僕はアイスを手にしていた。 噴水の周りを暑だるさに汗でじとじとする額をぬぐっている 女の人がいる。ベビーカーを押している。 ちっちゃな女の子がその横でそっとほとばしる水に手を伸ばしていた。 溶けたアイスがぴちゃ、と手の甲に落ちた。 ぺろっとそれを舐めてから、僕は冷たいソフトクリームを食べにかかった。 かさっ。何だろう?僕は後ろを振り返った。 柔らかい陽射しを受けて団栗の木と目が合った。ような気がした。 ちょっと小粒のどんぐりがそこここに落ちていた。 さっきの音はこのいがに包まれた大きめのどんぐりだろうか。 そういえば、さっき男の子が葡萄の種を埋めていった。 僕は、桃の種を植えようか。確か3年、だよな。 遠くぴーという音が聞こえた。しゃんしゃんしゃん。鈴の音も聞こえる。 目を閉じてみれば、そこにはよしっと決心した、ちょっと硬い顔の 男の人が見えた。じーっと見つめていると、女の人の後姿。キッチンだ。 子供達が大好きなアニメを見ながらも、背中の方で 心は楽しみなケーキに向かっているのがわかる。 ごーん。突然として鐘が鳴り響いた。そうだ。鐘を突きにいかなくちゃ。 甘酒を飲んで頬がかっかする自分が想像できた。 ポケットに手をやる。小銭がちゃり、と言った。よし、行こう。 僕は立ち上がった。 いつのまにか、雪が積もっていた。 |