電車を待つ間、 ホームから下を覗き込むようにして 一人の少年が言った。 「ねぇねぇ、あの石は何?どこから持って来たの?」 「あれは、べっこう飴とチョコレートでできているのよ。」 不思議なお姉さんが答えた。 「へぇ〜。」 電車がそのべっこう飴とチョコレートを隠すように入ってきた。 「この外側はね、小豆たっぷりの羊羹なのよ。」 「甘いんだ。」 「そう、そしてこの座席はお抹茶。この壁は最中よ。」 電車自体は随分と和風なのに、 それでも下はチョコレートなんだ。 きっと電車が始まったときに、チョコレートが流行っていたんだな。 少年は思った。 今日もあずき色の電車は甘い石の上を動き出し、 陽のあたる川をあたかも水あめが流れているかのように見る少年を 楽しそうに見つめる不思議なお姉さんがいる。 ちなみに、そのお姉さんによると機械を通すあのカードは お菓子のオマケだそうだ。 道理で、回収にご協力くださいの箱に入れるのがちょっと惜しいわけだ。 |